令和6年8月29・30日に開催された第33回無機リン化学討論会奈良大会にて、下関三井化学社員が研究発表を行い、若手優秀研究発表賞を受賞しました。
左:無機リン化学会 春日会長(授与当時)との記念撮影
2024.10.21
令和6年8月29・30日に開催された第33回無機リン化学討論会奈良大会にて、下関三井化学社員が研究発表を行い、若手優秀研究発表賞を受賞しました。
左:無機リン化学会 春日会長(授与当時)との記念撮影
【発表タイトル】
「リン資源リサイクル:人工リン鉱石の合成プロセス開発」
【発表概要】
リン酸は化学肥料・電子部品など広い産業分野において欠かせない製品です。しかし、日本ではリン鉱石が産出しないため、国内で使用されるリン資源は全て海外から輸入されています。近年世界的にリン資源の価値が高まりつつある中、輸入に依存しないリン資源安定確保の方法として、未利用リン資源からのリン酸製造に注目が集まっています。
下関三井化学は国内唯一のリン酸(湿式法)メーカーであり、また廃酸など化学廃棄物のリサイクル事業も手掛けていることから、未利用リン資源をリサイクルしてリン酸を製造する研究を行っています。今回の発表では、未利用リン資源として下水汚泥焼却灰に着目しました。
下水汚泥焼却灰とは、下水中のリンを濃縮した下水汚泥(活性汚泥)を焼却したもので天然リン鉱石に匹敵するほど高濃度のリンを含んでいます。しかしならが、天然リン鉱石に存在しない不純物も多く含まれているためリン酸の原料として用いることは困難でした。
そこで、下水汚泥焼却灰を精製して不純物を取り除きリン酸カルシウム(リン鉱石の主成分)として再合成する方法について研究を行いました。その結果、酸性・アルカリ性の条件を用いた2段階の処理を行うことで、リン酸製造原料として使用可能な品質のリン酸カルシウム(人工リン鉱石)を得ることに成功しました。
【今後の展望】
本研究により、高純度リン酸の原料として使用可能な人工リン鉱石の製造技術における方向性が確立しました。これにより、現在輸入に依存しているリン鉱石に対して、リン資源の国内循環構想を作る可能性が広がります。リンは経済安保推進法における特定重要物資にも指定され、半導体、EV電池等の原料として非常に重要であるため、国内での確保が課題となっております。この技術が一つの解決策となり得る一方で、現時点では、事業構想具体化やコスト削減など課題があります。これらをクリアして実現できるよう、引き続き検討を進めてまいります。
【下関三井化学のリサイクル事業について】
下関三井化学は、リン鉱石を硫酸で分解した粗リン酸を原料として分離精製を繰り返し、フッ素系化合物、精製リン酸、リン酸塩を生産しています。以下フローのように、リン鉱石中の成分であるリン(P)、カルシウム(Ca)、ケイ素(Si)、フッ素(F)、加えて硫酸(SO₄)を含む廃棄物を工場に受け入れ、製品の一部としてリサイクルすることができます。